取材協力:FaW ファッションワールド東京22秋
IRONY’s TOKYO
Reporter:近藤スパ太郎 Profile Page
2007年にInter FMでスタートしたエンタメと環境をテーマにした「ESSENCE OF STYLE」のパーソナリティを担当。以来、環境目線での取材やレポート活動を多く展開している。
ボクが「IRONY’s TOKYO」(アイロニーズ トウキョウ)のメンバーと出会ったのは、2022年10月。東京ビックサイトで開催された日本最大のファッション展示会「第13回 FaW TOKYO(ファッション ワールド東京)[秋]」(以下FaW)のブースだ。
FaW運営事務局から「高校生が立ち上げたサスティナブルなファッションブランド」というリリースがあり、スタートアップブランドを応援する小さなブース群のひとつかな…と思いきや、一般企業と並んだ大きなブースに多数のアイテムが展示されていてボクは驚いたのだ。
『社長は只今、別のお客様の対応中です。暫くお待ち頂けますか? その間、私でも宜しければブースを案内させて頂きます』と、とても丁寧な応対をするスタッフは、今年高校を卒業し、今は大学に通う1年生(18歳)で「IRONY’s TOKYO」の社員だという。
『中学の時の同級生で会社を立ち上げたので、全員が学校と仕事を両立しているんです』と言う。「うちの娘と同級生じゃん、すごいな!」と感心していると、
『大変お待たせ致しました、私が代表の重藤と申します」と登場した18歳の社長。 ホントに18歳? スーツ姿でなんだこの貫禄は? しかも彼は日本ではなく、カナダの大学に通っていると言う。
さらに数週間後、重藤君から国際電話が掛かってきた。『スパ太郎さんが撮影された集合写真、弊社のHPや、他のメディア取材に使わせて頂けませんか?』というお願いの連絡だ。FaW期間中は忙しくて、うっかり自分たちで集合写真を撮り損ねたらしい。『お願い事ですのでメールでは失礼と思いまして、電話を差し上げた次第です』。
「おう、いいよいいよ! 写真使ってよ!」と答えるボクは、大学生でしょ? どんな環境にいたらこんなに礼儀正しくなるんだ? 高校生の時にブランドを立ち上げるに至った理由は? 学業と事業をどう両立しているの? これからどうしていくの? などなど、重藤君と「IRONY’s TOKYO」のメンバーに興味を持ったのである。
米や大豆、玉ねぎ、ニンジン、ピーマンなど廃棄される食品と、土や木くずをまぜた素材。廃棄する際は土に埋めれば、約1年で微生物が分解して土に戻る…というケースに、IRONY’s TOKYOがデザインをしている。商品ロス削減と在庫リスク軽減のため、1個から対応する完全受注生産品だ。
• 成分構成:土壌(30%)、米(18%)、大豆(18%)、小麦(10%)、玉ねぎ(7.5%)、ニンジン(7.5%)、ピーマン(7.5%)、おがくず(1.5%)
「IRONY’s TOKYO」では、社会問題をテーマにZ世代をターゲットにしたその名も「IRONY’s TOKYO」のラインと、既に環境問題を身近に感じているアウトドア派層をターゲットにした「IRONY’s mountaineer」の、大きく2ラインを展開している。
■「IRONY’s TOKYO」ライン ブランドアイコンは リスの CHIPMUNK
オーガニックコットン100%のTシャツ、コットン100%のキャンバス地ランチバックにも、アイコンのリス“CHIPMUNK”が可愛い。
CHIPMUNK Collections リンク
■「IRONY’s TOKYO」ラインには限定商品もある!
限定品:Sweat Shirts 8940円
ボリューム感がある12.0オンスのオープンエンド糸を使用したスウェットシャツ。綿75%、ポリエステル25%の素材で、吸水性、速乾性に優れている。
「IRONY’s TOKYO」シリーズには、「IRONY’s」を象徴する「O」のロゴがIRONY’sカラーの“グリーンマーク”が、表面左下に付いている。
Limited Product リンク
■機能性を持たせた「IRONY’s mountaineer」ライン
mountaineer :Boa Jacket 22300円 (受注生産限定商品)
高級感とボリューム感が楽しめるボアジャケット。表地には羊のような肌触りのボア素材を使用し、裏地はメッシュを採用し肌触りを向上させた。裾のドローコードを引っ張れば冷気を遮断して防寒性もUPする。 mountaineer シリーズには、「IRONY’s」の「O」のロゴが mountaineer カラーの“ブルーマーク”が、表面左側に付いている。
IRONY’s mountaineer リンク
「IRONY’s TOKYO」の創業メンバーは、町田市立鶴川第二中学校出身の仲の良い同級生4人だ。都立総合工科高等学校 機械・自動車科に進学した重藤君は、家庭環境が複雑な境遇の子を対象にした無料塾で、塾講師のボランティア活動をしていた。 同じ機械・自動車科に進学したデザイナー志望の菅原君とは、こうした社会問題へ意識を常に話をしていたそうだ。
違う高校へ進んだ 教員志望の吉川君と高橋さんの2人も、重藤君、菅原君同様に子供が生き生きと育つ環境に興味があったそうだ。「同世代が社会問題に意識が持てる事業を始めよう!」と、皆でアイデアを出し合ったという。
色々と模索する中で、「Z世代の身近なアイテムに付随している事が、事業に繋がるのでは?」 と考えた。
更にリサーチをすると、玉ねぎやニンジン、ピーマン、米などの廃棄される食品や、木くずをまぜたスマホケースを開発した海外メーカーがある事を発見!
しかも廃棄する時は焼却(CO2を排出)するのではなく、土に埋めれば微生物が分解して、約1年で土に還る…という。
コレだ!
この素材に、自分たちのオリジナルのデザインを加えて販売しよう!と、直ぐに製造メーカーにコンタクトした。 いきなり沢山を発注する予算もないので、1個からの受注生産対応と、在庫のリスクはしない条件で交渉し、販売価格は5000円前後(時価相場で変動)に設定し、インスタグラム等のSNSで販売の告知をした。これが高校3年の夏休み前の出来事だったそうだ。
『半年でそれなりの量が売れました。1個からのオーダー対応だったり海外からの輸送経費などもあり、儲かってる…って訳ではなかったのですが、継続できる手ごたえは感じました』と、重藤君。
「Z世代の身近なアイテム」「飽きたらすぐに変えられる金額」「でもゴミにならない」と、Z世代が興味を惹く3つの条件を備えているこのスマホケースは、現在も「IRONY’s TOKYO」を象徴する商品のひとつとして展開中である。
『SNS戦略なども勉強し、バイトで稼いだ一人2万円ちょっとを皆で出し合って、事業の広告費に充てていました。コロナ禍で遊ぶ事も出来ないし、バイト代を出し合う事に反対する人はいませんでした』と重藤君。
SNSを使った広告展開を切っ掛けに、多くの企業の方や事業者と出会う事ができ、チャンスが巡って来たと言う。
■有名ピザ店「ジターリア ダ フィリッポ」のオリジナルエプロンを制作!
あるサスティナブル企業の方との会食でイタリアンレストランに行き、世界的なピザ職人でオーナーシェフの岩澤正和さんを紹介して貰った。そしたら「うちのグッツを作ってみる?」と、世界にファンを持つ「ジターリア ダ フィリッポ」の、オリジナルエプロン「50着」の制作を任されたのだ。
『これまでバイト代を突っ込んでいましたが、初めてプラスになりました。でもこの売り上げ金で、日本最大級のファッション展示会に出展しよう! と事業拡大に投資することになったんです』。
土に還るスマホケースに出会ったのが、高校3年の6月。その年2020年の10月に「IRONY’s TOKYO」のブランドをスタートさせて、2022年4月に実家の自分の部屋を登記して法人化した。
日本最大級のファッション展示会「FaW」に出展するには、ビザ名店のオリジナルエプロンの売り上げだけでは足りず、信用金庫や銀行から融資して貰う必要があった。 『ベッドや本棚、自分の着替えなんかも置いてある登記した僕の部屋に銀行員が来て、なるほどここですか… って帰って行ったんです』
それでもその後、なんとか融資して貰える先が見つかり、FaWに出展できた。少しでも経費を抑えるため、ブースの壁紙はニトリで買ってきて自分たちで貼ったという。
かなり無理して出展したFaWだったが、「10代の学生が立ち上げたサスティナブルなブランド」と、TV番組やメディアでも多く取り上げて貰ったそうだ。
これまでは企業へのBtoBをアプローチしても、10代の素人ということで門前払いされていたが、FaWを切っ掛けに、企業側からサスティナブル素材でのOEMの提案もされるようになり、出展した効果は大きかったようだ。
自社でサスティナブル素材開発をする事は、現状は無理だ。でも世の中にはサスティナブルな素材は沢山あり、この素材に「IRONY’s TOKYO」のデザインやオリジナリティを加える…という発想で展開している。
「IRONY’s TOKYO」の立ち上げメンバーの一人で、デザイナー、CTOの菅原君。ボクが出会った22年の秋は、デザイン学校の学生だったが、今は「IRONY’s TOKYO」の活動に専念し、チーフデザイナーとして自分の夢を実現している。
IRONY’s TOKYOの公式キャラクター「CHIPMUNK」も、「抹茶ドーナツを食べている画」も菅原君のデザインだ。消費者にはバレない様に、シーズン毎に裏テーマを持ってデザインしていると言う。 なになに? そう聞くと菅原君の裏テーマを知りたくなるなぁ~。『よーくじっくりと見て貰えれば、もしかしたらわかるかも知れません(笑)』と、菅原君。
FaWへの出展を切っ掛けに、渋谷パルコで展開するクラウドファンディングイベント へ誘われ参加。
そして今年の6月~7月には、好日山荘 京都河原町店で、アウトドアラインの「IRONY’s mountaineer」を中心に、サスティナブルアイテムのポップアップ店を大々的に開催した。
そして現在、マルイシティ横浜 にて、8月30日までポップアップ店を開催している。
■IRONY’s TOKYO 2023 POPUP マルイシティ横浜
場所:マルイシティ横浜 B2 floor
開催期間:8月17日~8月30日
『今は自宅のベッドの部屋…ではなく、新宿パークタワー30階にオフィスを構えました。共有スペースで会議や商品撮影もできますし、融資を受けたり、取引先からの信頼を頂くためにも必要なことと思いました。もちろん経費は抑えなくてはならないので、商品撮影は僕と菅原がカメラマンをし、モデルは友達に頼んでいます』と、重藤君。
中学時代の同級生4人に加え、「IRONY’s TOKYO」の活動に共感し、同じ目的を持ったカナダの大学の仲間も3人が加わり、7人の会社になった。現在は営業活動と、10月に東京ビッグサイトで開催されるFaW TOKYOへの出展準備に勤しんでいる。
『僕の大学は、今オンライン授業なんです。他の社員は日本の大学に通っていたり、今カナダにいたり休学した者もいます』と重藤君。『会社に入ってくるお金も多いんですが、キャッシュフローも多く、まだ大きなお金を目にしたことは無いです』と二人。
高校1年生でコロナ禍となり、部活動も無くなり、修学旅行にも行けず、卒業アルバムにはマスク姿の素顔がわからない同級生たちが沢山写る。
青春を謳歌できず、コロナの影響を受けたZ世代の起業家たちにとって、「IRONY’s TOKYO」の活動は、サークルでもあり、趣味でもあり、いち社会人としての一歩目の「仕事」でもある。
そんな彼らは、社会問題に取り組み「次の未来世代にバトンを渡せる企業」を目指している。
ボク個人的にも、娘と同級生の彼らの活動や取り組みに、今後も注目したいと思う。
■FaW TOKYO[秋] 出展情報
開催日:2023年10月10日~12日
場所:東京ビックサイト
※サステイナブルファッションの区画にて出展予定
FaW TOKYO 公式HP
■「IRONY’s TOKYO」:https://ironysclothing.com/
instagram : @ironys_tokyo