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45年の歴史 中央大学公認部会「児童文学研究会イーハトーヴ」と、サークル代表が立ち上げたWeb絵本動画の「えほんわーるど」。


■Reporter:近藤スパ太郎 Profile Page


斎藤達章さん (中央大学 多摩キャンパスにて)
中央大学 商学部経営学科4年生
中央大学公認部会「児童文学研究会イーハトーヴ」代表
Web絵本動画「えほんわーるど」主宰


コロナ禍で大学のサークル活動が長期間中止になり、再開しても活動の制限があったり、メンバーが集まらなかったり…。 そもそもコロナ世代と言われる1年生~3年生はサークル活動を経験していない者も多く、存続の危機を抱えるサークルが全国の大学で多発している。

そんな中、45年続くサークルの伝統を引き継ぎながら、新たな活路を見い出して活動を繋げて行こうとしているのが、中央大学の公認部会「児童文学研究会イーハトーヴ」だ。「イーハトーヴ」のサークル活動の様子と、代表の斎藤さんが立ち上げた、Web絵本動画の「えほんわーるど」を潜入取材した。


熱いエネルギーを持った 中央大学の学生 斎藤達章さんに出会った!

ボクが斎藤さんと出会ったのは、学生団体のReCrop(リクロップ)が主催した「横須賀×LGBTQ+ファッションショー」だ。 イベント参加者たちも声優やナレーターとして参加した、LBGTQをテーマにした絵本動画作品「自由な心」も上映された。

2021年8月31日 神奈川県・横須賀芸術劇場/ヨコスカベイサイドポケットで開催


劇場ロビーの一角で、作品の動画チャンネルのPRをしていたのが斎藤さんだ。相手の懐にグイグイと入り込む熱量がすごく(センスも良く)、ボクはてっきり動画制作会社の営業マン? と思っていたのだ。

ところがだ。 「いや僕は今、中央大学の学生です!」と斎藤さん。 『えーー、そうなの??』。

しかも斎藤さんは、あの新海誠監督をOBに持つ、中央大学の公認サークル「児童文学研究会イーハトーヴ」の現代表で、サークルでは児童文学の研究だけでなく、読み聞かせやなども行っていると言う。だがコロナの影響で通常の活動が一切行えず、サークルのメンバーとは唯一、オンラインで交流を計っているという。


一方で、斎藤さんは「自由な心」では編集を担当したそうだ。これはサークル活動とは別のものだが、少しでも絵本文学に携りたいことからの自身の活動のひとつだと言う。他の絵本動画作品でも制作や編集を担当し、イーハトーヴ部員も ”読み手” として参加している作品もあるそうだ。 でもオンラインで収録をしているから、とても苦労しているという。


ボクがナレーションや役者もしていることを伝えると、「プロの声優さんに講師になって頂いたり、作品にも参加して貰っているんです。よかったら LINE交換して貰えますか!?」と、さらに熱量を上げてグイグイと来た!!

おまけに帰りの電車乗車中には「本日はありがとうございました…」と、丁重なLINEメッセージが届いた! もう優秀な営業マンのフォローメールじゃないか…!

と、こんな風に積極的で熱いエネルギーを持った大学生に、ボクは少し興味を持ったのだ。


そして今年の初夏、「自分でWebの絵本動画チャンネル「えほんわーるど」を立ち上げました!」と斎藤さんから連絡を頂いた。 今はサークル活動も再開できるようになり、久しぶりに皆で集まって勉強会や収録をするので、その様子を見に来て欲しい…というのだ。

「おぅ、行くよ!」と、ボクは京王線に乗って中央大学多摩キャンパスへ向かったのだ……。


あの新海誠監督もOBの、中央大学「児童文学研究会イーハトーヴ」。

「児童文学研究会イーハトーヴ」の活動拠点は、中央大学多摩キャンパスにある。 東京ディズニーランドとほぼ同じ大きさの約51万㎡という広大な敷地を誇り、とても綺麗な多摩キャンパスだ。

その中で唯一、かつての学生運動時代の落書きや張り紙が今なお残り、ちょっと異色感があるのが、古い建物のサークル棟だ。

サークル棟の廊下


「児童文学研究会イーハトーヴ」の会室入口



多くのサークルがひしめき合う一角に、「児童文学研究会イーハトーヴ」の会室があった。

広くない会室の中は、絵本や児童文学書がびっしり! ごちゃごちゃ散らかっているのも、ザ・サークル活動 という感じで、懐かしい感じがする。


中央大学の公認部会である「児童文学研究会イーハトーヴ」の歴史は古く、大学の公式ページでは創部年が不掲載。だが斎藤さんが調べたところ、どうやら1977年の創部と判明したそうだ。

児童文学に関心のある学生が集まり、ファンタジーや絵本の読書や研究だけでなく、絵を描いたり、小説や絵本の制作も活動の目標にしている。

同会のOBには、アニメーション映画の「君の名は。」や「天気の子」でも知られる 新海誠監督もいるそうで、学生時代は絵本の制作活動を行っていたそうだ。 また文化祭には、作家活動や書籍や雑誌の編集者など、学生時代の夢を実現しているサークルのOB・OGも訪れ、先輩方との交流も楽しみのひとつだと言う。


現在の部員数は30名程。取材に伺ったこの日は、久しぶりにサークルメンバーが集まり、講師に声優の鈴木臨之介さんを招いて、斎藤さんが立ち上げた「えほんわーるど」の収録も行うことになっている……。


Web絵本動画「えほんわーるど」ってナニ?

近年、絵本の ”読み聞かせ” や ”動画コンテンツ” が人気で、KADOKAWAや、ドコモのdキッズなどの大手も、絵本動画を配信している。

えほんわーるど」は、2022年4月に斎藤さんが立ち上げたばかりの、YouTube で配信する絵本動画チャンネルで、童話や歴史物語、創作作品などを展開する。

YouTube「えほんわーるど」スクリーンショットより。



オリジナル作品の他にも、イーハトーヴのOBが昔作った絵本を掘り起こして動画化したり、「えほんわーるど」の活動で繋がった絵本作家さんの作品など、2022.08.24現在では11本が公開されており、まだまだ始動したばかり。

公開されている作品の中には、イラストを同じ中央大学のサークル 美術倶楽部CATS が担当したり、大学の枠を超えて繋がった 熊本大学美術部 広島大学美術部 の学生が手掛けるコンテンツもある。

また声入れにはプロの声優だけでなく、噂を聞きつけた声優の研究生たち、広島大学の演劇サークル・広島大学演劇団 が参加するなど、「えほんわーるど」を通して新たな幅広い交流も始まっていると言う。

「えほんわーるど」は、絵本作家やイラストレーター、動画クリエイター、声優など ”新たな才能発掘の場” としても期待できそうだ。



イーハトーヴ部員も「えほんわーるど」作品作りに参加!

さて、久しぶりにイーハトーヴの会室に部員が集まるこの日は、斎藤さんやイーハトーヴ部員がオリジナルで書き下ろした、グリム童話の「赤ずきんちゃん」、偉人伝の「ライト兄弟」と「アメリカ合衆国建国の父ベンジャミン・フランクリン」の3作品を、部員たちがセリフやナレーションの収録を行う。

制作方法は作品によって異なるそうだが、今回は先に音声収録を行い、後で編集した音声データにあわせてイラストを載せて行く…という手順だそう。イラストは、イラストレーターの カズーン!!!さん、シンガーソングライターでイラストレーターの darknessinhappyさんらが担当する。


ところが……。 開始時間の17時になっても会室にはまだ2人しかおらず、もっと部員が集まるまで雑談しながら待つ。「児童文学研究会イーハトーヴ」の活動は、ちょっとゆるい様子だ。

『今日何人来るの?』と斎藤さんに聞くと、「17:00~18:30まで会室を空けているから、その間に参加して下さい~!」 という案内をLINEグループに投稿しているそうだが、「授業や他の用事も個々で抱えているので、事前に出欠は取っていないです」。 部員約30名のうち、いったい誰が参加するのかは不明…とのこと。

『えっ? そんな感じで1時間半で3本も収録が出来るの?』 というボクの心配をよそに、「大丈夫です。来た人をその場で割り振って収録しますから!」と、斎藤さんはドーン!と構えている。



収録前には、とりあえず今いるメンバーで、プロの声優・鈴木臨之介さんの講義が始まるが、講義中にも「こんにちは~!」と来る部員がいたり、途中で「じゃ、僕はこの後授業があるので…」と、いなくなってしまう部員もいる。

収録前に講義を行う声優の 鈴木臨之介さん(一番奥の方)



講義が終わると収録の準備だ。サークルではプロご用達の音声収録マイクも所有しているのだが、今日の収録機材はマイクスタンドに取り付けた斎藤さんのiPhone。実は最近のiPhoneはとても高性能で問題なく収録できるそうだ。(実際にボクがリポーターを務めたラジオ番組でも、ピンマイクをiPhoneに繋げて、プロの音声さんも収録していました…)


セリフは役ごとに 1人づつ収録する。部員に収録用台本を配ると、演出も担当する斎藤さんの表情が真剣モードに変わり、役のイメージを伝えて直ぐに収録を開始!



声優は初めてです…という部員も何人かいるのだが、「もっとテンポを落として感情を入れてみようか!」とか「もっと憎たらしいヤツ…って感じを出して!」と、斎藤さんが役のイメージを的確に伝えてテキパキと収録が進む。 上手く出来た場合には「今の良いよ! そういう感じ!」とメチャクチャ褒める効果なのか、初めてとは思えないぐらい、みんな急激に上達するから驚きだ!


「授業で遅くなりました~!」と入って来た、総合政策学部 1年生の早川さん にも、「あっ、丁度いいや。この役のセリフ、早川君がやって!」と台本を渡して、直ぐに早川さんの収録がスタート。


1年生の早川さんにとっては、サークルの参加回数も少なく、収録自体も初めての経験で最初はかなり戸惑っていた様子だったが、収録が終わると「いや~、楽しかったです~!」と、何か充実した手ごたえがあった様子だ。

イーハトーヴ部員はシャイな方が多いのか、なぜか皆、顔出しNGという方が多い。 そんな中で、唯一顔出しOKだったのが早川さんでした…。

そして鈴木臨之介さんも収録。プロの声優の収録風景をこんな間近で見ることができるのは、イーハトーヴ部員の特権でもある。


鈴木さんの収録中にも「こんにちは~!」と入って来たり、「また後で来まーす」と会室を出て行く部員もいる…。 なぜこんなに自由なの? と不思議に思い、部員一人一人に、サークルに対する想いを聞いてみた。

皆「児童文学や絵本が好き!」というベースを持っているのだが、実はサークルを掛け持ちしている方も多く「イーハトーヴはとても自由に参加できるので、授業や他のサークルの合間に休憩や雑談をする感覚で来ているんです」「ココのサークルは心の拠り所です…」「居心地がいいのでなんとなく来ているんですかね…」。 中には「色々と相談しに来ている…」と答える部員もいた。

やっぱりこの ”ゆるさ” が、心地よいのかも知れないですね……。

モチロン、”自分で絵本や小説を書きたい!” と思っている作家志望の方も複数人いて、「作品書いてみなよ!」「絶対にやった方が良いって!」と、斎藤さんが鼓舞激励をする。

「やりたい!」と思った絵本動画コンテンツを自分で立ち上げて実践している本人が言う、「やってみなよ!」には重みがある。

実際に斎藤さんの声に押され、今回の収録作品の様に「えほんわーるど」のシナリオを書いている部員もおり、自分が書きおろした作品が誰でも見られるWebコンテンツとして残るのだから、とてもやり甲斐がありそうだ。



そして「スパ太郎さんも参加して下さい!」と、ボクも急遽役を頂き、3作品にちょっとだけ参加させて頂きました。 えーと、これは今日参加した部員が足りなかったからかな…(笑)

「そんなことないです!」と斎藤さん。




そして収録した作品のひとつ、「赤ずきんちゃん」が公開されました!



おぉ、なるほど。こんな作品になったのね。 画がとても可愛いですね! ボクは一言のセリフですが、他の2作品も順次公開されるそうで、どんな作品になるのか楽しみです!


今年は文化祭のリアル開催予定。11/3~6 は多摩キャンパスへ!

「児童文学研究会イーハトーヴ」では、毎年の文化祭で「絵本喫茶」を出展しており、学生同士や一般の来場者だけでなくサークルのOBやOGも訪れ、先輩方との貴重な交流の場にもなるそうだ。

コロナ禍という状況から一昨年の文化祭はオンライン開催。昨年はリアル開催をしたものの、来場者は学内生のみに制限して開催されたそうだ。

今年の文化祭の詳細はまだ発表されていないが、今年は室内企画での飲食出展が出来なくなったそうだ。 伝統の「絵本喫茶」に変わる代替案を、現在模索中らしい。

「1年生は勿論、2年生、3年生もコロナの影響でサークル活動を殆ど体験出来ていない。イーハトーヴの伝統を後輩たちに引き継いで行くためにも、文化祭は成功させなくてはならない大事な行事なんです!」と、斎藤さんにとっても学生生活最後となる、大イベントの準備にこれから忙しくなる。

一般公開されるのなら、ボクも文化祭に行ってみたいな!!


文化祭の情報は下記で更新される予定です。
■中央大学多摩キャンパス 第56回白門祭
11月3日(木祝)~6日(日)開催
公式HP: https://hakumonsai.com/

■中央大学「児童文学研究会イーハトーヴ」
Twitter:@chuo4339


コロナ禍でサークルの活動が制限される中でも、45年続くサークルの伝統を絶やさず、なんとか後輩に繋げて行きたい…とサークルや児童文学への強い愛を持つ斎藤さん。

「えほんわーるど」という自身で新たな活動の場を作り、活動が減ってしまったサークルメンバーにもモチベーションを向上できる場として提供。 コロナ禍でも人と人との新たな出会いや繋がりを生み、若しかしたら、人によってはチャンスを生む場になるかも知れない…。

「えほんわーるど」がこれからどんな動画絵本チャンネルに育つのか、ボクも見守りたいと思います。

■Web絵本動画「えほんわーるど」 YouTube チャンネル コチラ
Twitter:@ehonworld_2022



【了】




この記事を書いた人
◇ MC・パーソナリティ・俳優 ◇ 趣味:二輪車・電動バイクの試乗 ◇ 埼玉出身・東京在住 ◇ 環境問題パーソナリティ
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