取材協力:コヤマドライビングスクール
Photo by:コヤマドライビングスクール・SPANGSS編集部
東京と神奈川で5校の自転車教習所を運営するコヤマドライビングスクールは、在日外国人のための多言語教習や、障害を持つ方の教習も行っている。手話検定を受けるなど、手話のできるインストラクターが120名以上も在籍し、聴覚障害者の通学も多い。
「ドライブのD」「ろう者(DEAF)のD」「ダンスのD」と、「ライブイベントのLIVE」を合わせて名付けた国内最大級の 手話ライブ「D’LIVE」を 2004年から開催している。聴覚障害者と健常者が一緒に楽しめるベントで、毎年「手話ボランティア」を大学生や高校生から募り、手話サークルに所属する学生も多く参加している。
昨年、2023年12月9日に、川崎 CLUB CITTA’ で開催された「D’LIVE vol.18」には、11校の学生が参加。(参加校:東洋大学、北里大学、法政大学、慶応義塾大学、横浜国立大学、明治学院大学、早稲田大学、上智大学、大正大学、豊南高等学校、市立川崎高等学校)
参加した早稲田大学手話サークルの井上慶輔さんが、ボランティア学生目線での参加リポートを寄せてくれた。
Reporter:井上慶輔
(早稲田大学 手話さあくる3年目。「D’LIVE」の手話ボランティアは参加2回目)
こんにちは~。
早稲田大学「手話さあくる」の井上慶輔です。学業では統計や機械学習を学んでおり、長期インターンも行っています。
高校生の頃に「手話ってかっこいい!」と興味を持ち、早稲田大学の手話サークル参加をきっかけに手話を始めました。大学2年の秋に、”手話技能検定3級”を取得しています。
因みに私の手話のレベルは、日常会話をぎりぎり読みとれ、返せるくらいです。しかしコミュニケーションが難しい相手でも、なんとかして自分の気持ちや言いたいことを【伝えたい!】という気持ちは人一倍持っています。
現在「手話さあくる」には約120名が在籍し、他大学の学生も多くいます。普段の活動は任意で集まったメンバーで開催し、その時のテーマに沿った手話指導やゲームなどを、手話の経歴関係なく楽しんでいます。
SNSも活発に動いています!
■早稲田大学 手話さあくる
Twitter:https://twitter.com/syuwaseda
Instagram:https://www.instagram.com/syuwaseda/
コヤマドライビングスクール(コヤマDS)が主催する「D’LIVE」は、学生ボランティアを毎年募集していて、「手話さあくる」も毎年参加しています。 私自身は前回に続いて2回目の参加です。
これまで「手話は自分の思いを伝える手段」と思っていたのですが、初めて「D’LIVE」のステージパフォーマンスを観て「手話を歌に乗せるとこんなにも心に刺さるのか!」と感動しました。 他大学の学生たちとの交流や、学んでいる手話を実践する貴重な機会でもあり、来年も「D’LIVE」に必ず参加するぞ! と決めていました。
昨年末の「D’LIVE vol.18」で、我々学生ボランティアがどんなことを行ったのか、他大学との交流やちょっとしたハプニングなど「D’LIVE」参加の魅力をお伝えしたいと思います。
私のリポート記事を通して手話に興味を持ち、「D’LIVE」にも参加して下さる方が増えるといいな! と思っています。
「CLUB CITTA’」は、国内外の多くのアーティストが愛用する大型のライブホールです。
お客様の入場時間は16時、ステージパフォーマンスの開演は17時ですが、私たち学生ボランティアは12:30に 裏口(楽屋口)に集合しました。「手話さあくる」8名も楽屋口で受付し「D’LIVE」のロゴが入った運営用Tシャツを受け取ります。私はオーバーサイズのXXLを貰って、いい感じ。
コインロッカーに荷物を置き、着替えた後は全体ミーティング。昨年お会いしたコヤマDS の運営スタッフとも再会。逆に初参加の学生たちは少し緊張気味な様子。
ボランティア学生全員が事前に自分の手話レベルを伝えていて、運営側が割り振った役割班ごとに分かれて、お弁当タイム。
自己紹介を兼ねた楽しいランチ。
写真右がボランティア学生たちで、法政大学、横浜国大、川崎高校の手話サークル学生。去年参加した方とも再会して意気投合! コヤマDSのスタッフには、成城校で手話教習を行う指導員の方もいました。
食事後は、班の担当作業の説明。開場前は客席に置くお土産などの袋詰め。開場後は入場してバーカウンターに並ぶお客様を、手話を使ってアテンドをします。
早速作業開始! 他の班と協力して来場者600人分のお土産の袋詰め作業。ものすごい量でやりがいがあります!
突如「アイロン掛けできる人~!」と声が掛かりました。私が抜擢され、指示された場所に行ってみると、屋外スタッフが着る ”コヤマドライビングスクール”のロゴが入った防寒コートのしわ伸ばしのアイロン掛け。
防寒コートは複数の大きな袋に沢山入っているのに、アイロンはまさかの一つ。しかもとってもコンパクトなスチームアイロン……。 コートを取り出すと去年からそのままであろう頑固なシワ。 2人でシワをピーンと引っ張ってスチームを当てる。「これは時間かかるぞ~」と気合を入れ始めた早々に、問題が3つ生じました。
①アイロンの水の減りが早すぎる(まっ、コンパクトだから仕方ない)⇒ ペットボトルに水を汲んで直ぐに補充できるように対応
②アイロンのコードプラグが抜けまくる (これは会場のコンセント側の問題かな?) ⇒ 抜けない様に気を付けるしかない…
③ナント昨年焦がした? と思われるコートを複数発見! (ヤバイ! 焦りと緊張が目の前を走る!) ⇒ 俺は絶対に焦がさないぞ! と心に誓う……
実は初体験のアイロン掛け。しかもナイロン生地なので「直接触れてしまうと生地が一瞬で溶けてしまうよ!」と言われ、失敗が許されないドキドキの作業となりました。
シワは案の定頑固で、表も裏もあるため1枚終えるのに結構な時間が掛かり、「いったい何着あるんですかねぇ?」こりゃぁ終わらないぞ…と思ったら、「今夜は暖かいから5着で大丈夫です!」と指示を受け、私の焦りと緊張はすんなりとゴールを迎えました。(事故がなくてよかった…)
他の班ではこーんな作業もありました!
この班は夕方の開場後も外で来場者の整理も有り、私の防寒コートのアイロン掛け作業は、この屋外スタッフたちの為です。
楽屋周りの警備と出演アーティストのアテンド班。手話レベルが高いボランティア学生が配属されます。 …と、この様に開場前の準備は班毎に様々です。
さて、アイロン掛け終了後は、本来の袋詰め作業に合流。ですが大人数で流れ作業で行っており、入るすき間ないな~と最初は様子を伺っていましたが、直ぐに溶け込めました。
袋詰めが終わると班としての作業が一旦終了。
その後は自分が出来ることを探して他の作業に参加。先程詰めたお土産の袋を椅子に置く作業に合流しました。
「お客様入場まで、あと15分です~!」と聞こえた客席で「あれっ?」と違和感が。お土産を置かなくてもいい筈の椅子にも置いてあり、その逆もありました。
ヤバイ! とまたしても私の焦りが目の前に登場し、直ぐにお土産の配置表を「手話さあくる」の同期と一緒に確認。「あそこは(お土産)いらない、ここはいる!」 「あれ?足りない!?」 「あと15個詰めてー!」と手話と声を張り上げながらテキパキと進行。
会場内はステージリハーサルや効果音のチェックなどで大音量。声での会話が難しくても私たちは手話で会話ができ、こんな時にも手話はとても便利です。
「お客さん入場まで残り5分~!」と聞こえたころで、なんとか終了しました。
お客様入場後は、いよいよ手話を使って来場者のサポートです。 入場時にドリンクチケットが配られ、お客様はバーカウンターに並びます。私の班はお客様をカンターへ誘導したり、列の整理を担当。なにしろ600人の来場者ですから……。
私はバーカウンターの前に立ち、メニュー表を持ちながら、手話や指文字で通訳を担当。「どれがいいですか?」と聞き、カウンタースタッフに「いろはすで!」「コーラで!」「ビールです!」を繰り返していました。
一緒にカウンター前を担当した、横浜国大の杉山さんの誘導もとても親切で順調に進んでいましたが、時々さっき貰ったばかりのドリンクチケットをなくしてしまった方がいて、これも手話で対応しました。
このバーカウンター対応中に、私は初めて「触手話」を見ました。「触手話」は、視覚と聴覚の両方に障害を持つ「盲ろう者」が使うもので、手話が見えないため相手の手を触って “手の形” で伝える手段です。
ペアの方と「触手話」で話す希少な場面を目の当たりにして、驚きと感動が踊り始め「D’LIVEはこの様な方と健常者が一緒に楽しめるイベントなんだ…」と、D’LIVEの魅力を再認識しました。今回私が一番感動した出来事でもあります。
ドリンクに並ぶ方が終了すると、ようやくステージが開幕! 私達ボランティアスタッフは2階席からステージを堪能します!
DEAFパフォーマーのパフォーマンスは、手話歌、手話&ダンス、手話でちょっとした演劇、お客さんを巻き込んだもの……などなど、幅広い表現力でステージを楽しめます。
どのパフォーマーも素晴らしかったのですが、「マカローニ」のパフォーマンスは印象的でした。歌というよりは少し寸劇に近く、観客を巻き込んでみんなを笑顔にしている姿も感動的でした。
音楽が聞こえず、リズムが取れないDFAFパフォーマーたち。ステージ下のカウントマンが手話でリズムやタイミングを伝えています。
約2時間のパフォーマンスのエンディングは、恒例の「ヤングマン(Y.M.C.A)」を、ステージ上の出演者全員、観客全員、運営スタッフ全員が一体化して大盛り上がり!
エンディングが終わると、「今年のD’LIVEも終わったか…」と、寂しくもあり、満足感もあり…の気持ちで一杯になりました。
終演直後のステージ上で、参加した学生ボランティアスタッフで集合写真。DEAFのボランティア学生もいるため、「3、2、1」と、指と声を使いながら「パシャ」と撮影し、ボランティア活動も終わりを告げました。
「手話さあくる」のメンバーには、D’LIVE 初参加の人もいましたが、とても楽しんでいました。もちろん2回目の私も、終始ステージを見入ってしまうほど楽しみました。 「来年も参加する!」ともう決めています。
コヤマDS運営スタッフに「来年も参加します、今年もありがとうござした」と「手話さあくる」のメンバー全員で挨拶をし、メンバーと一緒に帰路につきました。
日本聴導犬推進協会 のブース。盲導犬は全国に約830頭いるそうですが、聴導犬はまだまだ認知度が低く、50頭ほどしかいないそうです。
「D’LIVE」では他校の学生たちと協力して作業をするため、ちょっとした絆が生まれたり、連絡先を交換したり、他学生との交流も広がります。私たちの「手話さあくる」のメンバーも連絡先を交換し、今後他校との交流会を開く予定です。
また「D’LIVE」に参加したサークルは、サークルの新入生勧誘チラシを、コヤマDSが無料で作ってくれます(印刷もしてくれます)。 さらに、参加したサークルや学生からの紹介でコヤマDSに入校すると、入学金が割引になったり、技能教習予約が優先的に取れたりとメリットが沢山。
しかしボランティア参加する一番のメリットは、手話ライブ「D’LIVE」を観られることだと、私は思います。
手話の魅力に繋がる話ですが、私は手話を『人の心と心を繋げる言語』だと思っています。手話は、自分の頭の中のイメージをそのまま、動きや表情で伝えることがあります。悲しみや喜び、焦りなどの多様な感情と、話し手の頭の中にあるイメージがそのまま表現されます。
手話を使って「歌」を表現すると、歌の中にあるメッセージがそのまま送られてくることを「D’LIVE」に参加して知りました。愛焦がれている歌も悲しみの歌も、元気になる歌も全て表現されます。 D’LIVE のパフォーマンスには手話本来の魅力が注ぎ込まれています。
私は聴者ですが、手話に出会えたことが大学生活の中で1番の幸運でした。これからも、どんな方とでも手話を通して繋がることを期待しています。
最後になりますが、出演者の皆様、一緒にボランティアスタッフとして活動した他大学・高校生の皆様、D’LIVE主催のコヤマドライビングスクール様、本当にありがとうございました。
そして、この記事を最後まで読んでくださった皆様にも、心から感謝を申し上げます。
いち大学生目線のリポートでしたが、あなたの世界がちょっとでも広がって見えてきたら本望です。
コヤマドライビングスクールのイメージキャラクター・パパル君と。私たち学生も参加できる、D’LIVE主催のコヤマドライビングスクールに感謝です!
■手話ライブ「D′LIVE」主催
コヤマドライビングスクール https://www.koyama.co.jp/
※エンタメ! ページにて「D′LIVE」情報を更新
■「D’LIVE」ボランティア参加問い合わせ
info@koyama.co.jp
TEL:03-5459-8811 FAX:03-5459-8812
2024年「D’LIVE vol.19」ボランティアサークル応募
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