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ホンダは 30年前の1991年6月に、ホンダ初の電動バイク「CUV-ES プロト」をお披露目した!


元ホンダの二輪車広報マンの「高山正之さん」と、当SPANGSS主宰の「近藤スパ太郎」の電動バイクのよもやま対談。2人は2000年にNPOヒマラヤハーモニーが主催した、ホンダの「FTR」と「SL230」を使った 標高5200mのチベット チョモランマベースキャンプを目指す、過酷なアドベンチャーツーリング仲間でもある…。


【登場人物紹介】
■高山正之/1955年山形県生まれ
2020年7月に46年務めた本田技研工業(二輪車広報マン)を退社。趣味で集めた オートバイ・カタログのコレクションを、当時の時代背景を解説しながら紹介する「カタログは時代を映すバックミラー」と、家庭菜園の様子を紹介する「高山農園日誌」を、当SPANGSSで連載中。
高山正之さんの記事コチラ


■近藤スパ太郎/1967年埼玉県生まれ
俳優・リポーター・当SPANGSS主宰 趣味:電動バイクの試乗(バイク誌にも電動バイク記事を連載中)/2007年~2008年に環境問題と音楽・エンタメをテーマにしたラジオ番組【Inter FM 「ESSENCE OF STYLE」】のパーソナリティを担当したコトを切欠に、環境問題の面白さにハマる。
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スパ太郎: 高山さん、こんにちは!  いつもSPANGSSに原稿を寄せて頂きありがとうございます。 コロナ禍で行動が制限されていますが、どんなバイクライフを送っていらっしゃいますか?


高山: かっこよく言うと、晴耕雨読ですね。自称「高山農園」で雑草と格闘したり、車庫のホーネット (ホンダのネイキッドタイプのオートバイ)を見ながら「ツーリングはもう少し我慢だ」とつぶやいている毎日です。 何といっても、オートバイのカタログや書籍、それにパソコンでひと昔前のバイク事情に思いをはせる時間が増えましたね。
 
スパ太郎さんは、「電動バイクの伝道師」とも言うべき活動も盛んですね。日本で一番「電動バイク」を体験しているジャーナリストだと思っています。


スパ: 「電動バイクの伝道師」。いい響きですね! このフレーズ使わせて頂きます!(笑)。  確かに 電動バイクの取材や試乗は、ボクのライフワークです。電動バイクってまだまだ過渡期ですし、最先端の技術が日に日に進化する。まだまだ色々な可能性に各メーカーがチャレンジしていて、自由な発想や工夫も面白いな! と思っています。

先日も ”日本で初開催” となった電動バイクのいち大イベント「電動バイクカフェミーティング」が箱根で開催され、進行役を務めました。 26社もの出展があり、自動車もそうですが オートバイも着実に「EV化」の流れが来ていると実感しています。なんたってあの ”ハーレーダビッドソン” も 電動バイクを販売する時代ですからね!

ハーレーダビッドソン初の電動バイク「ライブワイヤー」。2020年12月メディア発表会にて。スパ太郎の乗ってないけどインプレ記事はコチラ



スパ: 高山さんが勤務されていた ホンダのEV戦略を、先日 三部社長が ”今後の 電動二輪車の販売” についても表明しました。(※1) ですが世界の流れから見ると、少し展開が遅い気がしますがその辺りはどうなんでしょうか?
※1[2024年までにパーソナル領域で原付一種・原付二種クラスに3機種の電動二輪車を、さらにFUN領域でも商品を投入]などを、2021年04月23日に表明。 参照Honda HP 


高山: 今の電動二輪車の開発事情については知りえていませんが、ホンダという会社は時折「何でこの時代にこのようなものを発表してしまうのだろう」ということが良くあります。 あまりにも早すぎて、時代もお客様もついていけない。

でも、このような取り組みが業界や消費者を刺激して、技術革新や利用用途の拡大につながっているのだと思います


スパ: 今や当たり前の様に走っている「スーパーカブ」も、1958年の発売当時としては、デザインも性能も、価格もぶっ飛んでいた…って言いますもんね。 それに、ラッタッタのキャッチフレーズでヒットした「ロードバル」も、女性の行動スタイルを一新してしまった商品でしたものね!

1958年(昭和33年)の初代スーパーカブ 「C100」。 50cc 空冷4ストローク単気筒エンジンを搭載。当時としては斬新なデザインと、クラッチ操作がいらないこと(自動遠心クラッチシステム)、好景気も後押ししてくれて時代と消費者を虜にした。1958年は東京タワーが竣工した年でもある。


1976年 ホンダ「ロードパル」。50ccの空冷単気筒 2ストロークエンジン搭載。
1976年 ホンダ「ロードパル」車体左側のペダルでゼンマイを巻く。

1976年に バイクと自転車の中間的な新しいジャンルの二輪車として発売された「ロードパル」。ペダルを踏み込み込むとエンジン始動用のゼンマイが巻かれ、ゼンマイの復元力でクランクが回ってエンジンが始動する。”ラッタッタ”のキャッチフレーズで テレビCMにソフィア・ローレンが起用され、爆発的なヒットとなった。




スパ: でも、電動モノとしては、記憶に残るものが無いんですが……。


高山: 知る人ぞ知る製品かもしれませんが、今年はホンダの ”電動スクーター” が一般公開されてから30年になります。


スパ: えーー、そうなんですか!? 30年前に ホンダの ”電動バイク” があったんですね!


高山: はい。1991年の6月1日-2日に、渋谷の代々木公園で開催された「第6回低公害車フェア」に、「CUV-ES (シーユーブイ イーエス)」という原付1種相当の 電動スクーターのプロトタイプを出品しました。当時ホンダから報道向けにリリースも発行しています。

ホンダ初の電動二輪車「CUV ES」。 写真は1991年のプロトタイプではなく、後の1994年に発売された車両。


ホンダ初の電動二輪車「CUV ES」が開発された背景。


スパ: でも「低公害車フェア」が開催された1991年当時は、日本はバブル経済の真っ最中ですよね。オートバイもクルマも、最先端のパワフルな物を求めていました。低公害車に興味を持つ人は少なかったんじゃないですか? 

特に原付1種の電動バイクは、まだ必要とされていない時代…だったと思うのですが、ホンダは何を目的に開発したのでしょうかねぇ?


高山: 資料を見ますと、1989年にフランスのパリで開催された「アルシュ・サミット」で、C02排出量規制などの環境宣言されたことがかなり影響しています。 化石燃料に依存している技術を見直すという、産業革命以来の変革が求められたわけです。


スパ: そうなんですね。今から32年前ですよね。 日本がバブルに沸いている中、海外ではもう「化石燃料に依存しない」と動きだしていたんですね。

でも当時の日本は、クルマは3ナンバーで見栄を張る…なんて時代でしたから、やっぱりまだ「地球温暖化ガス」の規制について、注目されていなかったように思います。低公害車フェアも、ホンダ初の電動バイクも、それほど大きなニュースにはならなかったんじゃないですか?


高山: 私は低公害車フェアに行っていないので当時の様子は分かりませんが、スパ太郎さんが言うように、まだまだ生活の中で、電動バイクが必要とされている時代ではなかったと思います。

これは私の持論ですが、ホンダは1962年ころに、二輪車の生産台数で世界一の企業になりました。 当時は全て4ストロークエンジンで、環境にも配慮していました。しかしながら、ホンダが販売した二輪車から排出される量は、大変な数値になります。

ですから、より環境へのダメージが少ない製品を開発することは社会的な使命でもあると思います。 従って、環境保全には人一倍気を使っている企業でしたね。 1992年には「ホンダ環境宣言」を制定しています。持続可能な社会などを提唱していますから、今でいうSGDsを 約30年前には取り組み始めていたわけです。


スパ: んーー、なるほど。やっぱりホンダはグローバルでの先見の目がスゴイですね。 そんな時代背景もあって、”電動スクーターの開発が動き出した” …ってわけですね。

あるジャーナリストに聞いたのですが、ホンダは「多くの人が今は望んでいなくても、「欲しい!」となったときに「こちらをどうぞ」と直ぐに提供できるように、常に先手先手で研究開発をしている」と。 中には陽の目を見ないモノも多くある…と。


高山:「CUV ES」は、陽の目を見られましたから、幸せな存在でしたね。では、概要を少し紹介したいと思います。


1994年3月「CUV ES」が200台限定で発売開始!


高山: 「CUV ES」は、1991年に代々木公園で「CUV-ES プロト」が一般公開された後、1993年の東京モーターショーに参考出品して、1994年3月に「CUV ES」と車名に「-」が無くなって発売が開始されました。

1994年に発売された ホンダ初の電動二輪車「CUV ES」のカタログ。
1994年に発売された ホンダ初の電動二輪車「CUV ES」のカタログ。



高山:200台限定の販売で、しかも一般販売ではなく、官公庁や地方自治体への ”3年リース販売” でした。


スパ: 今の「ベンリィe:」や「ジャイロe:」と同じリース販売式ですね。やはり使用したバッテリーの回収などを考慮してのリース販売ですか?


高山: そうです。車載するバッテリーは ”ニッケル・カドミウム” ですから、放棄されてしまいますと二次公害につながります。いくら排気ガスが無くてクリーンな車両でも、バッテリーを違法投棄されますととんでもなく環境汚染につながりますから。それと、未知数の電動二輪車ですから、使用実態などの基本データを蓄積することも重要でした。

現在のホンダの ”電動ビジネスバイクシリーズ” の3機種。左から「ベンリー e: (ベンリィ イー)」「ジャイロ e:」、今年の夏に発売予定の「ジャイロ e: キャノピー」。3機種ともに共通の脱着式 “リチウムイオンバッテリー”の「モバイルパワーパック」を2個搭載する。 使用したバッテリーを回収する目的に現在、法人向けのリース販売車として発売されている。
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スパ: でも「CUV ES」は当時、売れたのでしょうか?

高山: 興味を示す団体は結構あったと聞いていますが、ビジネス的には成功とは言えませんでした。限定200台で3年間のリース価格が「85万円」でしたからね。


スパ: 原付バイクで「85万円」か…。 やっぱり価格がネックですよね。当時も今もこの課題は大きくは変わっていないですね。 充電時間と航続距離はどんな性能でしたか?


高山: カタログでは、8時間の充電で61km(30km/h)の走行ができました。少しでも価格を抑えるために、車体は「Dio」をベースにしています。

ホンダ「CUV ES」
1992年 ホンダ「Dio SR」


スパ: おぉ! 走行距離は現代の電動バイクと比較しても、そんなに大きくは劣らないですね。驚きました。 ホントだ! 比較してみると「Dio」をベースにしている事がよくわかりますね。でもステップボードの厚みがちがいますね! 


高山: バッテリーを ”ステップフロアの下” に配置して、なんと、メットインスペースはそのまま使用できるようにしているのです。


スパ: えーー、そうなんですね。それはスゴイな! 今の電動スクーターは、エンジン車でいうメットインスペースに、バッテリーや補器類が収まっているから、30年前に収納スペースをそのまま確保しているのはスゴイですね。実用性は落とせない…という開発の拘りかも知れませんね。

高山さんは実際に乗ったことがあるんですか?


高山: ありますよ。青山本社の駐車場で乗りました。スロットルグリップを回すと、音もなくスルッと発進できてしまう。とても自然な感じでした。結構力もありそうで。


スパ: おぉ! やっぱり電動バイクの特性を活かした ”トルク” を感じる走りなんですすね!


高山: ですが少し乗ったところでメインスタンドを掛けようとしたら、上がらない。「何で?」 と思ったら、「バッテリーが60kgあるのでもう少し力を入れてください」と、開発担当の方からアドバイスを受けました。


スパ: バッテリーだけで60kgですか! そりゃ重いですね。 えっ? となると、車重はいったい何キロなんですか?


高山: ズバリ130kgです。同じ原付スクーターの「Dio」が約70kgですから、最初から大人1人が乗っているのと同じ計算です。


スパ: 今の「ベンリー e:」に積んでいるリチウムイオンバッテリー「ホンダ モバイルパワーパック」1個が約10kgですから、このバッテリーの重量差は、リチウムイオンの恩恵ですね!
※「ベンリー e:」にはホンダ モバイルパワーパックを2個搭載

それにしても「CUV ES」、やっぱり当時の最先端が詰まっていて、とても興味が沸いてきました。機会があれば乗ってみたいです!


高山: ホンダコレクションホールに所蔵されていますが、バッテリーが機能していないかもしれませんね。内燃機関モノは、60年経っても、場合によっては100年経っても実動できますが、電気モノだと難しいでしょう。


スパ: 確かに…。バッテリーは劣化しますからね。電動バイクの旧車や絶版車に当時のままの状態で乗るのって難しいってコトですね。 でも今の二輪車はリサイクル可能率がとても高いです。これから二輪車の電動化が進むコトは間違いないので、今後はバッテリーのリサイクル技術やリユースの仕組みを進化させなくてはいけませんね。


高山: 四輪車が「バッテリーEV」で突き進んでいますが、今の技術ではどうしてもガソリン車に比べてコストが高く、価格も高くなる。極論を言いますと、貧乏な人は乗れなくなるということです。価格が安くて性能もいい夢のようなバッテリーは、まだまだ時間がかかりますからね。


スパ: オートバイも「ガソリン車販売禁止」の流れがありますからね。将来、オートバイが身近な乗り物ではなくなってしまったら、悲しいなぁ。


高山: 二輪車は、まだまだ内燃機関にしがみついて、燃費をさらに高めるような技術を突き詰めて欲しいですね。生産から廃棄まで考えるライフサイクルアセスメントでは、今はまだバッテリーEVよりも優れているかもしれない。


スパ: 内燃機関を否定する声もありますが、直ぐに全ての車両がEVに切り換わる訳ではないですし、色々な技術開発をして、色々な選択肢や可能性があるって良いんじゃないか…とボクも思います。


高山: 環境保全には多くのお金がかかります。そして我慢することも求められます。コロナ禍で我慢できない人が多くいたことは明白になりました。老若男女全ての人たちが理解できるようなカーボンゼロ社会を提唱していかなければ、絵にかいた餅になってしまいます。

私は、自分が出したCO2は少しでも回収したい。ボランティアで雑木林の保全をしたり、菜園で緑を増やすなどしています。気休め程度ですけど。


スパ: 環境問題やSDGsは、自分が取り組める身近な事から考えてみたり、始めてみると良いですよね。 そして環境問題への取り組みは、やっぱり色々な最先端技術があって、ボクは面白いなーと思っています。 電動バイクにも、今の最先端技術が ふんだんに取り入れられていますモンね!

「CUV ES」は、もう街中で見ることはできないですが、当時ホンダが、社会や消費者に刺激を与えた 最初の電動バイクであったことは、後世に伝えるべきだな…と思いました。


高山: そうですね。「CUV ES」は、それまでの「大きい・重い・走らない」の三拍子そろった電動の乗り物を、開発陣が払拭しました。そして、原付1種としての法規制上の位置づけを明確にできました。これらをベースとして、他の各社も取り組みやすくなったと思います。


スパ: はい。技術開発だけでなく、行政とのすり合わせも大変だったと思います。


高山: それに電気モノは室内でも使えますから、様々な可能性を持っています。今度は、陽の目を見なかった東京モーターショー出品モデルを紹介したいですね。


スパ: おぉ、その企画良いですね。 モーターショーは各社から様々な ”電動二輪車” が参考出品されてきましたから、今改めてふり返ったら、そこに将来のヒントがあるような気がします。 電動バイクのメリットでもある ”デザインの自由度” を活かした車両もありましたよね!


高山: 我々には将来の電動社会がどうなっていくのか分かりませんが、過去からヒントを得る「温故知新」のような話はできるかもしれませんね。


スパ: それ、楽しみです! そして「CUV ES」は、時代に先駆けて世の中に提案したホンダの意欲作でした。残念ながら多くの方が乗れる機会はなかったですが、その貢献を称えて、SPANGSSの名車「殿堂入り」ということで締めたいと思います。 

パチパチ(拍手) 


■1994年発売 ホンダ「CUV ES」【SPEC】
通称名:CUV ES
車名・型式:ホンダ A-AF 36
全長×全幅×全高(mm):1.785×615×1.035
軸距:1.265mm
最低地上高:100mm
車両重量:130kg
乗車定員:1名
最小回転半径:1.9m
原動機の種類:直流ブラシレスモーター
原動機の型式:AF 36M
定格出力:0.58kw
最高出力:3.3kw/3,600rpm
最大トルク:0.9kgm/3,200rpm
変速機形式:無段変速式(Vベルトコンバータ)
タイヤ:[前輪]80/100-10 46J [後輪]90/90-10 50J
制動装置形式:機械式リーディング・トレーリング(前後とも)
懸架方式:[前輪]テレスコピック式 [後輪]ユニット・スイング式
フレーム形式:アンダボーン
バッテリー種類/型式:ニッケル・カドミウム/12KR-20000M
バッテリー容量:86.4V-20Ah
バッテリー充電電源:AC100V(単相)
充電時間:最長8時間(冷却時間最長2時間を含む)
1充電走行距離:61km(30km/h定地走行テスト値)
メーカー希望小売価格 850000円をベースに3年間のリース販売方式とする(地域希望小売価格の一例:北海道は8,000円高、その他一部地域を除く。参考価格。消費税を含まず)

ホンダ「CUV ES」公式リリースページ
https://www.honda.co.jp/news/1994/2940225.html



高山正之さんの記事コチラ

近藤スパ太郎 記事 コチラ

この記事を書いた人
◇高山農園主・時々物書き ◇ 山形県 現庄内町生まれ ◇ 1994年 埼玉県で高山農園をスタート ◇ 2020年 65歳で本田技研工業(二輪車広報マン)を退社
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