Reporter:高山正之/1955年山形県生まれ 時々物書き。
2020年7月に46年務めた本田技研工業(二輪車広報マン)を65歳で退社。
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私が生まれ育った山形県庄内地方の片田舎の警察署には、白バイが1台配備されていました。
その白バイとは、当時500ccの大排気量を誇る「メグロK1」でした。中学生の時は憧れのまなざしで見ていました。
中学3年の夏休みの自由研究では、「メグロK1」の後継モデルとして進化した「カワサキ 650-W1 スペシャル」を鉛筆で精巧に書いて提出しました。
私が初めて買った 1969年12月号の ”モーターサイクリスト” です。
中面のアルバム写真にあるこの「カワサキ 650W1 スペシャル」を見本に拡大した鉛筆画で、スポークを1本1本書く作業が大変でした。 残念ながら鉛筆画は残っていません。
高校生になりバイク通学していた時には、「メグロK1」の白バイは大魔王のような存在でした。なにせ90ccのスズキ「ハスラー」では逃げ切れません。あの図太い ”4ストサウンド” を響かせて疾走する姿には、畏怖の念をいだいていました。
2020年11月17日に、川崎重工業はニューモデルの「MEGURO K3」を発表しました。私の脳裏には、50年前に田舎で聞いたあの ”4ストサウンド” が蘇りました。
早速、11月20日に一般公開となった「MEGURO K3」を見るために、”スーパーカブ110” を駆り、世田谷区のカワサキプラザ東京等々力店に向かいました。この店舗は「目黒通り」沿いにあることも、何かの因縁だと感じました。(後で紹介します)
私は、メグロのバイクにも、カワサキ「650-W1」をはじめ新世代の「W650」や「W800」にも乗ったことがありません。しかしながら、何故こうにも心を動かされるのか。それは15歳の少年の脳裏に深く刻まれた、あの ”バーチカルツインサウンド” によるものなのでしょう。
では、私が所有している「カワサキ ”650シリーズのカタログ”」と、「カワサキプラザ東京等々力店の展示の様子」を紹介いたします。
※「650-W1」のカタログは、お気に入りだったのですが、切り取って勉強部屋に貼ったり、友人に差し上げたりして残っているものは数枚になってしまいました。
「メグロの時代」から継承されるカワサキの「バーチカルツインエンジン」。1973年に発売された「650-RS」、DOHC 4気筒エンジンを積んだ「750-RS(通称Z2)」登場の背景も紹介しながら、カワサキ・バーチカルツインエンジンの大まかな変遷と時代の流れを紹介いたします。
■1960年 メグロ「スタミナK1」4ストローク OHV 2気筒500cc 発売
(カワサキ「650-W1」のルーツとも言えます)
こちらは1964年製の、メグロ「K1白バイ仕様」。 同年の東京オリンピックの聖火リレーを先導した白バイとして知られています。
※浅間記念館展示車(2020年10月撮影)
■1964年 目黒製作所、川崎航空機工業に吸収される
■1965年 「カワサキ500メグロK2」を発売
(「K1」のモデルチェンジ版)
こちらは後程紹介する、カワサキプラザ東京等々力店に特別展示された「カワサキ500メグロK2」。
■1966年 「650-W1」を発売
(排気量を650ccにアップ。当時は、国産二輪車として最も高い”47馬力”の最高出力を誇りました。)
■1968年 「650-W1スペシャル」を発売
(キャブトンマフラーの採用で人気が高まりました。)
そして翌年の1969年には、ホンダから高性能4ストローク OHC 4気筒750ccエンジンを搭載した「ドリームCB750FOUR」が発売され、たちまち「ナナハン」の名前とともにバイクファンから絶大な支持を得ます。
同じ1969年に、カワサキが ”2ストロークエンジン” の技術を結集した3気筒エンジンの「500SSマッハⅢ」を発売。
ここから日本メーカーの高性能大型バイク作りが大きく変化しました。 またこのような高出力・高性能モデルの登場によって、「650-W1」の販売にも大きな影響が表れます。
そして時代は、750cc4気筒のナナハンが大型バイクの象徴でもあるかのように、各社が競い合ってナナハンモデルを投入していきます。
カワサキも4年後の1973年に4気筒のナナハン「750RS(Z2)」が登場するのですが、その前に性能を高めた「650-W1スペシャル」を発売します。
■1971年 「650-W1スペシャル」 モデルチェンジして発売
1971年の「650-W1スペシャル」のカタログ表紙。堂々とした風格があります。
ハイウエイ時代を意識したコピーと、「日本最初の本格的2輪GT」と謳っています。最高出力は、前モデルから6PS高められた53PSになっています。
メグロの時代から「650Wシリーズ」は、英国伝統スタイルの ”右チェンジ・左ブレーキ” の設計でしたが、このモデルから、”左チェンジ・右ブレーキ” に変更されます。 時代の流れによって、国産バイクのほとんどが採用している方式に合わせました。
裏面は、少し物足りなさを感じてしまいます。
■1973年 「650-RS」と、4気筒の「750-RS(Z2)」を発売
OHV 2気筒の「650-RS」は、Wシリーズの車名を新たにしてフロントにダブルディスクブレーキを装着。 「750-RS(Z2)」は 4ストローク DOHC 4気筒750ccの高性能スポーツモデルとして大ヒットします。
1973年の「650-RS」と「750-RS」のロードスター2機種のカタログ表紙。「650・・・」の車名はこれまでのWシリーズから「650-RS」に変更されています。
中面では両雄揃い踏み。大型バイクならではのツーリングシーンを演出しています。
「650-RS」の紹介ページ。今では絶対に使われないであろう「漂う男の体臭」のコピーは、「男・カワサキ」を表現したものか?
裏面には、現在につながる「フライングK」をあしらったロゴが登場しています。 新しいカワサキのイメージが伝わってきます。
「650-RS」は、味わい深く趣味性の高い大型バイクとしてベテランライダーに支持されますが、高性能スポーツモデルの陰に隠れてしまい、しかもカワサキの中にも強力なライバル車両が現れ、翌年の1974年には生産中止になりました。
■1999年 「W650」発売
1974年の「650-RS」の生産中止から25年後の1999年に、ニューモデルの「W650」(空冷4ストロークSOHC4バルブ並列2気筒) が誕生します。 「650-W1」のコンセプトを現代に蘇らせたモデルとして、好評を博しました。
■2011年 「W800」国内モデルを発売
2011年には「W650」の排気量をアップした「W800」を発売するなど、バーチカルツインエンジンの系譜は今も続いています。
■2020年 11月17日 「MEGURO K3」を発表
MEGURO(メグロ)ブランドの復活です。「W800」がベース車両です。
ここからは11月20日(金) ~11月24日(火)に、カワサキプラザ東京等々力店で”特別展示”された「MEGURO K3」「カワサキ500メグロK2」「メグロジュニアS2」「900super4 (通称Z1)」を少し紹介します。
「MEGURO K3」
空冷4ストローク SOHC 4バルブ 並列2気筒
総排気量:773cc
発売日:2021年2月1日
メーカー希望小売価格:税込127万6000円(税込価格)
カワサキの現行モデル「W800」をベースに、重厚なブラックで統一した伝統を感じさせるスタイリングです。
ステージ上には、伝統と歴史をクローズアップさせた当時の看板を再現。看板は、CG処理ではなく職人さんが手掛けたものだそうです。
発売日が2021年2月のため、カタログはまだ準備されていませんでした。
1965年製「カワサキ500メグロK2」
今から55年前に発売されたモデルです。当時の国産バイクの中では高性能かつ存在感の高い車両でした。目黒製作所が吸収された翌年のモデルで、車名には「カワサキ」と「メグロ」の二つのブランド名が付けられています。
「カワサキ500メグロK2」と「MEGURO K3」のエンブレムを比較してみると、少し違いがありました。
1954年製「メグロジュニアS2」
空冷4ストローク OHV 単気筒。排気量は250ccで、カワサキ「エストレヤ」(250cc) のルーツと見る人もいます。
「メグロジュニアS2」のエンジンがカットされており、中の構造が確認できました。
1972年「900super4(通称Z1)」
空冷4ストローク DOHC 並列4気筒 903cc。カワサキのスーパースポーツモデルを語る時には欠かせない存在です。
【了】
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