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【旧車・絶版車】1970年90ccロードスポーツ。バイク4メーカーが10.5馬力でガチンコ勝負!|カワサキ90SS、ヤマハHS1、スズキウルフ90、ホンダベンリイCB90


Reporter:高山正之/1955年山形県生まれ 時々物書き。
2020年7月に46年務めた本田技研工業(二輪車広報マン)を65歳で退社。
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『カタログは時代を映すバックミラー』(第4回)
中学2年生でオートバイのカタログに夢中になり、後に憧れのホンダに入社する。二輪車の広報マンを長年務めた高山正之さんが ”趣味” で集めた “オートバイ・カタログコレクション”!! その時代のバイクを取り巻く環境や当時の流行などをお届けします。 オートバイカタログは「ひとつのバイク文化」なのです…。

学園ドラマの「青春シリーズ」と「青春の90ccロードスポーツ!」

1960年代後半から1970年代中頃にかけて、10代の若者の間で「90cc スポーツバイク」が大人気でした。 この当時の二輪免許は、50cc以下の ”原付免許” と、一発試験で取れる排気量の上限なしの ”自動二輪免許” の2種類でした。

バイクに興味を持つ当時の高校生たちは、免許取得ができる年齢、16歳になるのが待ちきれません。同じクラスメイトでも4月生まれと3月生まれでは、天国と地獄ほどの差があり、私も多くの友人たちも”一発試験”で自動二輪免許を取得しました。

「90cc スポーツバイク」は、新車で7万円代、中古車では2万円くらいからあり、夏休みにアルバイトに励むと程度の良い中古車を買うことができました。親の援助があると 念願の新車も夢ではありません。 当時の125ccは、イメージとしては ”本格的なスポーツバイク” でしたから、親にとっては 90ccくらいのバイクなら安心感もあったのだと思います。

当時の流行と言えば、日本テレビの「青春学園シリーズ」が挙げられます。1965年から1974年まで、一世風靡したといっても過言ではないでしょう。日曜日の夜の放送を見て翌朝学校に行くと番組の話で盛り上がりますから、見逃すわけにはいきません。※このテレビ番組については後述します。

この ”青春学園シリーズ” が放送された時代と、 ”90ccスポーツバイク” が注目された時代がオーバーラップします。このような背景から「青春の90ccロードスポーツ」と呼ぶことにしました。

最高出力8PSだった、1960年代後半…。

1968年にカワサキが 最高出力”10.5PS”の「90SS」を発売すると、「90ccロードスポーツ」の人気が一気に加速します。

それ以前の各メーカーが販売していた「90ccロードスポーツ」の顔ぶれは以下の通りです。

・ホンダ 「CS90」
 4ストローク単気筒 8PS 90ccロードスポーツとして1964年に発売される。

・ヤマハ 「AT90」
 2ストローク2気筒 8.2PS(1966年発売) 分類はビジネス ※90ccクラスで唯一の2気筒エンジン

・スズキ 「AS90」
 2ストローク単気筒 8.4PS (1968年発売)


これらのバイクをカタログで紹介します。

1968年 ホンダ ベンリイ「CS90Z」!

1968年ホンダ ベンリイCS90Z カタログ表面
1968年ホンダ ベンリイCS90Z カタログ裏面


1964年に、90ccのロードスポーツとして発売された「CS90」。

紹介する、1968年の ベンリイ「CS90Z」の最高出力は ”8PS”で、通勤や通学で多く見られました。「青春の90ccロードスポーツ」の中で唯一の ”4ストローク車”です。本田宗一郎が大の2ストローク嫌いでしたから、この当時のホンダは全て ”4ストローク車” でした。

バックボーンプレスフレーム(Tボーンフレーム)に、スーパーカブ系のエンジンを搭載して、最高速度は100km/hに達していました。 CS90Z の「Z」は、メッキ外装のモデルを意味します。

90ccクラス唯一の2気筒エンジン搭載、ヤマハ「AT90」!

1966年に発売された「AT90」ですが、’66年のカタログが手元に有りませんので、1968年のヤマハ総合カタログで紹介します。

1968年 ヤマハ総合カタログ
1968年のヤマハ総合カタログを拡大。

ビジネスシリーズの部分を拡大しました。
ヤマハオートルーブツイン90「AT90」の最高出力は ”8.2PS”で 最高速度も”100km/h”。ダブルシートを採用しながらも ”ビジネスモデル”に分類されています。当時のヤマハには90ccクラスに「ロードスポーツモデル」はありませんでした。

ですが、ヤマハファンが「90ccロードスポーツ」を選ぶとすれば、90ccクラスで唯一の”2ストローク2気筒エンジン”の「AT90」でした。車体色には”黒”と、価格が1,000円高い”赤”もあります。

1968年 ヤマハ総合カタログ。

こちらも1968年ヤマハ総合版です。”若さ” を前面に出して、バイクで青春を謳歌しよう! と訴えかけているようです。テレビドラマの「青春学園シリーズ」のエンディングは、夕日に向かって走るのがお決まりですから、そんなイメージもこのカタログから垣間見えます。 


1968年 スズキスポーツ「AS90」発売!

1968年に発売された「スポーツ AS90」ですが、やはり’68年のカタログがないので、1969年のスズキ総合カタログで紹介します。

1969年 スズキ総合カタログ。
1969年 スズキ総合カタログを拡大。


総合カタログを拡大しました。
スズキスポーツ「AS90」は 2ストローク単気筒エンジン、最高出力”8.4PS”で 最高速度は”100km/h”です。プレスバックボーンフレームはビジネス車と共有でした。
(この総合カタログは1969年の物ですから、後で紹介する「ウルフ90」も載っています。)


このように、1968年のカワサキ「90SS」が発売される以前は、各メーカーともに最高出力は ”8PS”台でした。

カワサキが先陣を切って10.5馬力の「90SS」を発売!

1968年、カワサキは 最高出力 ”10.5PS” の性能を持つ「90SS」を発売しました。 手元に1968年のカタログがありませんので、1970年の ”カワサキ90ccモデルの総合版” で紹介します。

1970年のカワサキ90ccモデルの総合カタログ「カワサキ90」というビジネスモデルも ”10.5PS”を誇っているのが驚きます。


カワサキ「90SS」は 他メーカーの90ccモデルよりも最高出力が ”2PS” も高い”10.5PS” で、最高速度も ”110km/h” を誇っています。フレームもスポーツバイクとして本格的な ”ダブルクレードルフレーム” を採用するなど意欲作に仕上げていました。

(このカタログには後で紹介する「90SSデラックス」も掲載されています)

1969年 ヤマハスポーツ「90 HS1」を発売!

1969年に、ヤマハスポーツ「90 HS1」が 最高出力”10.5PS” 、最高速度 ”110km/h” という、カワサキ「90SS」と同じスペックで登場しました。 2ストローク2気筒エンジンに、ツインキャブレター、ツインエアクリーナーの採用で、スポーティーなパイプフレームも新鮮です。

1969年 スズキ「ウルフ90」を発売!

1969年 スズキウルフ カタログ表紙
1969年 スズキウルフ カタログ中面。
1969年 スズキウルフ カタログ裏面。


ヤマハ「90 HS1」の発売と同じ1969年に、スズキは斬新なスタイリングに、新開発の ”2ストローク2気筒エンジン”の「ウルフ90」を、最高出力”10.5PS”、最高速度”110km/h”と、ライバルメーカーと同じスペックで続きます。

1969年 ホンダは「CS90」をマイナーモデルチェンジ。

1969年 ホンダ ベンリイ「CS90」カタログ表紙。


同じく1969年、ホンダはベンリイ「CS90」をマイナーモデルチェンジし、スタイリッシュなタンクやセパレートタイプのメーターなどで対抗しますが、最高出力は”8PS”のままで、他の3社に比べると性能面では劣っている印象がありました。

「90cc ロードスポーツ」の購入を考えているヤングたちは、ホンダから10.5PS、最高速度110km/h の高性能モデルが発売されるのを待ち望んでいました。

1970年 ホンダがニューモデルの ベンリイ「CB90」を発売!

1970年、ついにホンダがニューモデルの ベンリイ「CB90」を発売。最高出力 ”10.5PS”、最高速度 ”110km/h” と他社と同じスペックを ”新設計の4ストローク単気筒エンジン” で達成したのです。

1970年 ホンダ ベンリイ「CB90」カタログ。
1970年 ホンダ ベンリイ「CB90」カタログ裏面。


CB」という ”ホンダのスポーツモデル” の代名詞でもある名称を与えられ、やや前傾した新開発の ”4ストロークOHC単気筒エンジン”で、10.5PS、110km/hを達成しています。

ホンダは、唯一の ”4ストロークエンジン”で 他社と真っ向勝負です。

4ストロークエンジンは、2ストロークに比べ、機構が複雑で部品点数が多く、コストも高くなります。しかしながら燃焼効率に優れ、燃費が良いことや排出ガスがきれい、そして耐久性に優れる特長があります。
当時の小排気量のバイクには、軽量・小型でコストが安い2ストロークエンジンが一般的でした。

1970年 カワサキ「90SSデラックス」発売!

1970年 カワサキ「90SSデラックス」カタログ。
1970年 カワサキ「90SSデラックス」カタログ裏面。


1970年、カワサキは「90SS」をベースとした、よりスタイリッシュな「90SSデラックス」を新たに投入します。

こうして1970年に、4社自慢の「90cc ロードスポーツ」が同じ土俵で闘う激戦のスタートが切られました。

今も人気の原付二種クラス!

「90ccスポーツモデル」は、フルサイズのロードスポーツに加え、トレールタイプも各社から続々と発売されるなど、1970年代中盤まで多くの若者に支持されました。

しかしながら、1975年に ”二輪免許制度” が大きな変革を受け、”原付”、125ccまでの”小型限定”、400ccまでの”中型限定”、そして難関を極め一発試験でのみ取得できる”自動二輪”の4段階に分けられました。

また、ユーザー側にとっては兄貴分の125ccモデルへの移行も見られ、メーカー側としても90ccと 125ccとの棲み分けが難しくなってきました。

中間排気量と言われた90ccモデルは、やがて小さな車体を売りにする「ホンダXE75」や「ヤマハMR80」、「カワサキKM90」などに変化していきます。

現在は、原付2種(50cc以上125cc未満)のバイクがコストパフォーマンスの高さなどで幅広い年代で支持されています。スクーターも加えますと魅力的なモデルが多くあります。より多くの若い人たちに、このクラスのバイクで青春を謳歌していただきたいものです。

「青春」という言葉を広めた日本テレビの「青春学園シリーズ」!

昭和20年代、30年代生まれの人たちにとって、「青春」を恥ずかしげもなく口に出して言えたのは、日本テレビの「青春学園シリーズ」が大きく影響していると思います。

第1弾は、1965年に放送開始された「青春とはなんだ」です。夏木陽介氏主演の熱血先生が、生徒たちと問題を解決しながら青春を謳歌するという設定でした。高校生になるとあんな世界が広がっている…と子供心に感じたものです。

そして第2弾の「これが青春だ」へと続きます。布施明氏による主題歌もヒットして、学校の運動会では応援歌としてみんなで歌うほど、実際の学校生活にも溶け込んでいました。

この「青春学園シリーズ」は、1974年に放送された中村雅俊氏主演「われら青春」まで続きました。番組名全てに「青春」を採用する徹底ぶりでした。 その後を受けて、1978年には水谷豊氏主演の「熱中時代・教師編」へと続きますが、題名に青春は採用されませんでした。


この時代が「90ccのロードスポーツが激しく闘っていた時代」とオーバーラップしています。 当時の高校生にとって、価格や取り回しなどが身近だった「90cc ロードスポーツ」に乗れば、彼女と一緒に夕日を見ることができる。という幻想がありました。

ちなみに、私が育った山形県では、私が中学生までテレビは3チャンネルしかありませんでした。NHK総合、NHK教育、民放は山形放送の1局だけ。山形放送は日本テレビ系列なので青春学園シリーズは見る事ができましたが、フジテレビやTBSテレビの存在を知らなかったという、時代錯誤のような中学生時代でした…。


【了】

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この記事を書いた人
◇高山農園主・時々物書き ◇ 山形県 現庄内町生まれ ◇ 1994年 埼玉県で高山農園をスタート ◇ 2020年 65歳で本田技研工業(二輪車広報マン)を退社
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